大橋直久「接客会話のマナー その1」

たいして飲めないのだが、Bというバーに行くのは、会話にけじめがあり、信頼でき、リラックスできるからなのだ。

なかでも、大切なお客さまをもてなしたいときは、迷わずBを選ぶ。

たとえば、常連のお客さまには、「先日はありがとうございました。

あの××会社の○○さんは、その後お元気ですか」と何気なく挨拶がわりに言ってしまいそうなものだが、Bのマスターは、決して口には出さない。

だからとても安心できる。

なぜかといえば、××会社の○○さんの話は、私とマスターにはわかる話でも、今日連れていったお客さまAさんには、チンプンカンプンの関係ないこと。

また、私としても、そうして余計な情報をAさんに知られたくはない、ということも多いからだ。

この会話のけじめは、ブティック、宝飾、飲食など、あらゆる業種のマナーとして当てはまるだろう。

あなたと常連のお客さまだけなら、お互いに「この間は」とか「先日お買い上げいただいた、あれ・・・」と、共有できる会話で盛り上がったほうが、いいコミュニケーションがとれる。

でも、一人でもこのAさんのように、その常連以外のお客さまがいらっしゃる場合は、その方が参加できないような話は持ち出さないと、心にけじめの鍵をかけたほうが、常連さんも困らなくてすむし、Aさんも傍観者にならなくてすむ。

大切なマナーだ。

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