大橋直久「いいこともあれば悪いこともある」

人間万事塞翁が馬で、この世の中は、いいこともあれば悪いこともあるのに決まっている。

ところが、やっかいなことに、今度はいいことがあるだろう、きっとあるだろうと思って待っていると、いいことはなかなかなくて、反対に悪いことは準備もしないうちにいきなり襲ってきたりするものである。

ニュースなどで、タクシーに乗ったら座席に紙包みが落ちていて、あけたら何百万円という札束だったので、びっくりして交番に届けたら、やがてのことに落し主が現われて、一割の謝礼を

もらってアッという間に財布がふくらんだなどという話がよく報じられる。

一回ぐらいは自分にもあんな幸運がきたってよさそうなもんだ、と誰しも思う。

そこでタクシーに乗るたびに、用心深く座席をみたり、床の下の方を捜したりすると、かえってボケヅトにさした万年筆を落としたりして損をすることがある。

道で宝くじを拾って、それが大当りだったという確率と、歩いていて自動車に大当りだったという確率は、どちらが大きいか、考えてみてもわかる。

しかしながら、よほど十分な準備をして待つなら別だが、いわゆるッイているッイていないと俗にいわれるように、運不運がほんの紙一重の差で思いがけずやってくるのも、また事実である。

大橋直久〜就活生・新社会人のためのマナー講座