大橋直久「PR根性をまねる」

どういうわけかどの人も、目の前でポケットをもぞもぞやりながら、

「あ、あ、あの、こういう者で、あ、こりゃ、違いました。他の人の名刺でした」

と、ひとりであわてて、名刺入れを電気の光にすかして自分のをとり出している人が多い。

人生は戦場である。

昔のサムライは、いざ合戦の最中に、「やあやあ、遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ、われこそは清和源氏十六代の……」

から始まって、故事来歴全部名乗って戦ったのである。

あのPR根性を真似ないといけない。

この際、心がけておかなくてはならないのは、名乗りはゆっくりということである。

「西川です」

と、早口でこちょこちょというと、ニシカワなのかイシカワなのか、それともハシカワか、さっぽりわからないので、

「はあ?」

と聞き返されるのがオチで、はじめから損をしてしまう。


大橋直久〜就活生・新社会人のためのマナー講座