大橋直久「契約の本質」
もう一度、セールスの原点を思い出してほしい。
セールスマンの力だけで商談を契約成立にまで導けるものではない。
最終的に商品を買うのはお客様自身である。
どんな商談も、どんなビジネスも、お客様の購入意欲と協力なしには進展しないし、お客様の合意なしに商談は成立するはずもない。
商談全体をピラミッドにたとえると、毎回のお客様と接触するたびに、お客様と「合意」を重ねてゆき、そのいくつもの合意のうえに最後に「契約」という最大の合意が積み上げられるのである。
それは若い男女が最初の出会いから、デートを重ねて、やがて恋人同士となり、最後にめでたく結婚に合意しあうことと似ている。
もし毎回の出会いやセールスコールで、双方が十分に合意を確認しないままデートや商談を進めると、最後に、いざ結婚だ契約だといっても、堅固な土台がないため、恋愛も商談も崩れてしまう結果に終わる。
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大橋直久「チャンス話法」
チャンス話法のなかでも、キャンペーン中の特典割引というのは、実質的には裏での値引き価格を定着させてしまう。
二者択一話法は、安いものには有効だが、高額商品となると、二つの商品を薦められたために、お客様が迷って購入決定を先送りしてしまう危険性を招く。
直接話法は、選挙のときに候補者が「よろしくお願いしま〜す」と連呼するのに似て、相手の支持を取りつける切り札がないことを自己暴露している。
以上のような無理があるから、へたに従来のクロージング話法を使うと、せっかくの商談をまとめる段階でビジネスが決裂してしまう事態となるのである。
しかし、この重大な事実に気づいているセールスマンはひじょうに少ない。
たいていは、押しの一手でお客様を説得し、無理やりにクロージングに持ち込もうとして、お客様の反発を招いて失敗する。
もしくは、クロージングをすると断わられるのではないかとお客様を怖がって、なんとなくあいまいのままお茶を濁し、けっきょく成約を見逃してしまう。
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大橋直久「顧客対応セールストークの基本」
売手「ありがとうございます。ではさっそく、弊社のショールームで実際にご覧いただきたいと思います。来週あたりですと、ご都合のよろしい日はいつ頃でしょうか」
顧客「う〜ん、来週の水曜日の午後ならば、おたくにうかがえると思います」
売手「では、とりあえず、来週の水曜日の午後をデモのためにお時間をあけておいていただけませんか。詳しくは、いったん帰社いたしまして確認の上、もう一度ご連絡させていただきます。よろしいでしょうか」
顧客「はい、それで結構です」
顧客対応セールストークの基本である。
業種・業態を問わず、これはセールスの基本である。
セールストーク基本を土台にして、各自で自分のセールス分野に即した応用を組み立ててほしい。
直接販売、間接販売、ルート販売などと、セールスの形態は異なっても、お客様を大切にする精神には変わりない。
真の意味で顧客対応のセールストークとは何であるか、それがよく分かっていただけると思う。
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大橋直久「平凡と非凡の差はここで開く」
平凡な人間というのは、いつも自分で無意識のうちに損をしてしまっていることに気がつかない種類の人が多いものである。
自分の声で明るく名乗れてこそ、相手の心を開いて、そのあとの話が胸を開いた形で話すことも聞くこともできるのである。
ところが、初対面の成功不成功はどこにあるかというと、その八十パーセントは第一印象をどのようにうまくつくるかにかかっている。
そして、その第噌印象の紙一重のポイントはどこかというと、あいさつが終わったあと、何の話から切り出そうかというほんの数秒、時には剛秒の何分の一かの間をどうするかにかかっているといって過言ではない。
名刺を交換しあったあと、一瞬、両方で顔を見合わせてしまうことがよくある。
そして相手が口をきいてくれると、何かしらホッと救われた気分になるが、さもないと、目のやり場に両方で困ってしまい、沈黙がやってくるか、さもないと「えヘへ」と意味のない笑いが空白を埋めたりするものである。
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大橋直久「PR根性をまねる」
どういうわけかどの人も、目の前でポケットをもぞもぞやりながら、
「あ、あ、あの、こういう者で、あ、こりゃ、違いました。他の人の名刺でした」
と、ひとりであわてて、名刺入れを電気の光にすかして自分のをとり出している人が多い。
人生は戦場である。
昔のサムライは、いざ合戦の最中に、「やあやあ、遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ、われこそは清和源氏十六代の……」
から始まって、故事来歴全部名乗って戦ったのである。
あのPR根性を真似ないといけない。
この際、心がけておかなくてはならないのは、名乗りはゆっくりということである。
「西川です」
と、早口でこちょこちょというと、ニシカワなのかイシカワなのか、それともハシカワか、さっぽりわからないので、
「はあ?」
と聞き返されるのがオチで、はじめから損をしてしまう。
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大橋直久「身分社会の国」
問題はこの紙一重でやってきた機会を、平凡なわれわれがどんな工夫をしてうまく自分のものにするかである。
たとえば、誰かに紹介されて、初対面の人にセールスにいったとする。
「ごめん下さい。私はこういうものでございます」
といって名刺を出すのが、日本での普通の光景である。
これが凡夫たるゆえんなのである。
日本は依然として身分社会の国であるから、自分の名前よりも先に、名刺を出して自分の身分を相手に信用してもらうことが大切なのである。
そういう悪習から抜けきらないから、日本人は社会人になるとみんな親からつけてもらった名前を忘れて「こういう者」という名前になる。
肝心なのは、自分の名前ぐらいは自分の言葉ではっきり名乗るくらいの自信を持てということである。
「ごめん下さい。
私、中央生命の凸山凹太郎と申します。
中曽根康弘さんからご紹介をいただいてまいりました」
といってから、確認のしるしとして、ゆっくり丁重に名刺を渡すのである。
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大橋直久「クライマックスの舞台」
この世の中には、各界にスター的な存在の人物が沢山いるが、この人達をみていると、彼らには必ずドラマがつきまとう。
そしてそのクライマックスの舞台に立った時に、彼はいつも観客の期待に応えるだけのことをするのである。
二死満塁一打逆転というチャンスは、考えてみればどの選手にも公平にやってくるはずのものである。
ただ、その時に、勝つとばかりにヒットやホームランを打つのが、王選手や長嶋選手(ともに当時)であり、この人達は多くの平凡な人間である観衆やファンを興奮の渦の中に巻き込んでくれ、翌朝のスポーツ新聞を二つも三つも買いこむジャイアンツファンをつくるのである。実は私もその一人なのだが。
もちろん、もって生まれた才能と不断の努力が巧みにまざりあってそうした結果を生むのだが、チャンスを生かしきるのとそうでないのとでは、人生の長い間のプラス・マイナスの勘定では大変な差ができてくるのは確かである。
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